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このスワップ取引により、A銀行は5年間にわたり固定金利を受取り、一方ユーロ円金利を支払うことになる。
想定元本の100億円は、あくまで金利計算のために想定した計算上の金額であり、実際その金額を手当てしておく必要はない。
だから「想定」なのである。
A銀行は、半年毎に2.25%の金利を受取る反面、半年毎にユーロ円6ヶ月LIBOR金利を支払うことになる。
現在並びに将来における計10回の6ケ月物LIBOR金利が、2.25%より低ければ利益が上がり、反対に2.25%より高ければ損失が発生するわけである。
スワップ取引を理解するのに金利の流れに着目すると解りやすい。
このスワップ取引における金利の流れは、A銀行が、100億円ユーロ円市場から資金を、LIBORフラットで借入れし、同金額、期間5年、金利2.25%の債券に投資する場合とまったく同じ金利の流れになる。
つまり円金利スワップにより、LI BOR資金を調達して、5年物社債を購入するのと同じ経済効果を作り出せたのである。
認一般化すれば、円金利スワップで固定金利を受取ることにより、債券のロングポジションを、また固定金利を支払うことにより債券のショートポジションを作り出せることになる。
また金利スワップの経済効果は、債券売買と本質的には同じと言える。
次に、金利スワップ取引と債券売買を比べた場合の長所と短所を述べることにする。
金利スワップの第一の長所は、実際100億円という資金や債券を手当てしなくても、同額の債券購入や売却というポジションを造成できるので、資金効率がよいことである。
さらに、実際の債券投資や資金調達には、税金や手数料がかかることが多いが、円金利スワップ取引の場合、それらのコストがほとんどかからないことである。
最後になるが、債券売買や資金借入等の現物取引の場合には、法律やいろいろな規制により取引がかなり制約されることが多いが、金利スワップの場合には、市場主義における自己責任原則が貫かれており、取引が自由であることである。
券の現物市場で債券取引をするリスクと本質的には同じと言える。
円金利スワップを単体でみると、効率の良いスペキュレーションの道具でしかない。
しかしながら、企業や銀行の資金取引と一緒にみると話はだいぶ違ってくる。
ここでは、長期信用銀行のC銀行と都市銀行のD銀行を例にとり、円金利スワップの実際の利用方法と果たす役割を述べることにする。
長期信用銀行であるC銀行の資金調達は、利付金融債を発行しているために長期の調達比率が高い。
資金運用においては、大企業の直接金融指向や設備投資の鈍化の影響を受けて、長期固定金利での融資は減少傾向にある。
余剰資金の一部は、短期貸出や短期金融市場での運用をせざるを得ない状況である。
一方、都市銀行であるD銀行の資金調達は、債券発行が許可されていないため、短期の預金の受入れやユーロ市場等の短期の金融市場からの資金調達が中心である。
資金運用は、中小企業向けの長期融資や個人向け住宅ローンが好調で、急速に長期運用の比率が伸びてきている。
C銀行は、ギャップが資産超過ポジションにあるため、金利上昇に際しては運用利回りが上昇して収益が好転するが、金利低下の場合には収益が悪化する。
一方D銀行は、反対にギャップが負債超過ポジションにあるため、金利上昇に際して調達コストが上昇して収益が悪化するが、金利低下の場合には収益は好転する。
このような状況にある二つの銀行の経営上のリスクに対するヘッジ方法を考えてみたい。
C銀行の場合は、長期固定金利の融資を伸ばしたり、利金債の発行を減らして短期調達の比率を上げることが解決策といえる。
D銀行の場合には、債券発行等により長期固定調達を増やしたり、好調な固定融資を押さえることが解決策といえる。
しかしながら、これらの方法は、法律・行政指導や営業上の様々な制約から必ずしも現実的な対応ではない。
例えば、現在都市銀行の債券発行は許可されていないので、D銀行にとり長期固定調達を増やすことには限界がある。
またC銀行が、固定金利融資を伸ばすために、中小企業や個人向け融資を伸ばすことにも長信銀という歴史的背景からして限界があろう。
以上のように、オンバランス取引による対策は限界があり、貸借対照表の上だけでミスマッチ・ポジションを管理することは困難である。
規制金利体系が終篇しつつある現状において、スワップ取引の本質は、フロントにいるディーラーだけではなくむしろ金融機関のトップにおいて理解されるべきである。
通貨スワップを使えば、必要な資金の調達にあたって、同じ通貨による資金の借入れや社債の発行を必ずしも行う必要がなくなる。
例えば、ある銀行が、長期の円固定資金を必要とする場合、ドルやマルク等世界中で最も有利な条件で資金調達できる市場で資金借入れや起債を行い、通貨スワップで円固定資金を作り出すことが可能になるのである。
最近のスワップ取引残高の急拡大や、よりリスクの大きい長期のスワップ取引の急拡大により、スワップの相手方に対する与信管理が非常に重要になってきている。
そのため、スワップにおける信用リスクを軽減する方法として様々な試みがなされている。
ISDAによるスワップ契約書の標準化が進んだことや、差額決済条項による同一相手との複数のスワップ取引の相殺が可能になったことにより、信用リスクを大幅に軽減することが可能になった。
さらには、スワップ契約に担保条項を入れることも一般化してきている。
最後になるが、現物市場から派生したデリバティブ取引の中で最も利用されているスワップ取引は、リスクや取引原理においては現物取引と大きな違いはない。
また、現物市場の発達と相互に影響しあって市場取引を活性化するものと思われる。
それゆえ、スワップのリスク管理においては、スワップだけを特別扱いして他の取引と分離する議論をすることこそ問題である全ては二つのコクサイ化から始まった1970年代、二度の石油ショックを経験した日本経済は、それまでの高度成長から低成長へと大きく舵を変えることになった。
この環境の激変により、日本経済は、戦後の高度経済成長を支えてきた経済システムを大きく変更することを余儀なくされた。
これを受け多くの企業は、国内市場の拡大の鈍化から、製品の販路を求めて海外進出を本格化することになった。
また、1985年のプラザ合意以降の急激な円高に対応するため多くの輸出企業は、主力製品を含めて海外工場での生産を本格化することになった。
ここに至って、輸出関連企業の国際化はほぼ完了することになった。
一方、輸出とは無縁の企業においても、円高の進行による内外価格差の拡大が間接、直接企業経営に影響を与え始めている。
それまで多くの規制や系列取引に守られていた国内取引においても、バブル崩壊後の不況の長期化や消費者の低価格指向により、国際価格を無視した価格設定がもはや不可能になってきているからである。
このことは、今後日本経済が、内なる国際スワップの浸透は、長年に渡り堅牢を誉ってきた我国金融制度のあり方に風穴を開け、不可避的に新体系を築きつつある。
石油ショック後の経済環境の大きな変化は、もう一つの「コクサイ」化を日本の金融界にもたらすことになった。
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